アイドルと賞と読書感想文
加藤シゲアキさん著書の「チュベローズで待ってる」を読み終わりました。非常に興味深く、エンタメ性に溢れ、人柄も見えた「おもしろい本」でした。
加藤シゲアキさんのファンはいつも言います。「賞がほしい」と。
これは本人が「僕はジャニーズだから本を出させてもらっている。本来賞がもらえていない人は本が出せないのに」のような発言をしていたからで
彼はこれまでも4冊の本を出していて、内容もしっかりしていますが受賞歴はないからです。
私も例に洩れず「加藤さんはやく賞がとれればいいな」と漠然と思っていました。
私はNEWSのファンだからです。
でも、最近、加藤さんの出演する「タイプライターズ」という番組がきっかけで読書量が増えて
素晴らしいたくさんの作家、たくさんの本を読み、この世界がどれほど才能溢れたすばらしい物語に満ちているか知りました。
チュベローズを読む前に、実力ある売れっ子作家さんが構成12年かけた超大作的な小説を読んで、私は大層感動しました。
この世は素晴らしい…物語は美しい…この本に出あえて良かった…
その直後にチュベローズage22を読みはじめました。
私は学生の頃はそれなりに小説を読んだりしたんですが海外ファンタジーものだったりして、
大人になってからはぱったりと読まなくなっていまして。
加藤さんの処女作「ピンクとグレー」を入手してからも中盤に入るまで全然読み進められなくて…活字読むのがなれなくてしんどくて…ファンだから読まねば…という義務感で読んでいて…
でも途中から、怒涛の展開があり、そこから一気に読んでしまいました。
「おもしろい!!!!!!!!!」っていう気持ちでいっぱいで、最後のりばちゃんがごっちに近づきすぎてしまって…というラストの描写の色彩の鮮やかさに心奪われました。
それ以降、加藤さんの本めっちゃおもしろーい!!と喜び今出ている本を全部読んで、そしてタイプライターズを通して又吉さんの本、又吉さんが好きな本、加藤さんが紹介していた本を読み、「好きだ!」と思う作家さんも見つかったりして当時より随分と小説というものを身近に感じるようになりました。
その経験値を積んでからいざ加藤さんの最新作、前評判が高く過去最高傑作と呼び声高い「チュベローズで待ってる」の上巻を読んだ時、文章の質感の…軽さのようなものを感じました。
連載していた雑誌がSPA!というクs…雑誌というのもあり読者に合わせてきたところもあるでしょう。
でもその時私は思ったのです。「この作品は賞をもらえるのだろうか」と。
驚きの展開が起こり、ハラハラして一気に読めてしまう「読みやすさ」に優れたこの作品は、果たして文学の賞にひっかかるのか…?と…
エンタメに特化した作品は、審査員にどう映るのだろうかと。
本を読むようになってやっとわかった、今まで読んできた受賞作の稀有な作品性を思い出しながら
「加藤シゲアキさんは賞をとれる作家なのか」というのを考えました。
age22は確かにおもしろかった。この10年後の後編はどうなるのだろう。まだホストを続けているのだろうか。
様々な憶測が捗る。でも全部外す。見た目は大人、頭脳は子供、糞探偵ハナチャム。推測が下手。
でもほんとうに意外なことがいっぱい起こって、先の展開が読めなかったんです。
エンタメ性の高い内容。
次々起こる急展開。
読みやすい文章。
読み進める度に「この本はおもしろい」という確信を得ていきます。
そして段々と、「賞って本当に必要なんだろうか」と考えるようになりました。
私が前述した最高におもしろかった長編は2段組のめっちゃ分厚い仕様のものでした。
いくらおもしろくても、最高だと言っても、この本を読みきる事が出来る人は限られてきてしまうと思うんです。
でもチュベローズは読みやすい文体で文字も大きく、2冊分冊ということもあり手にとりやすく、次々と起こる展開にハラハラする。
それこそ「加藤さんのファン」「アイドルが書いた小説を読んでみよう」という読者にも入りやすく、文学の世界へ手を引いてくれるような案内人のように感じました。
個人的に、この2冊の対比は本の「おもしろさ」とは何かを 考えさせる巡り会わせでした。
何が「優れた本」となるのか。
そこに賞は必要なのか。
加藤さんに受賞歴などなくても、確実に文学の世界へ貢献しているし、
彼が小説を書き始めたきっかけである「所属グループへ還元したい」という目的ももう充分に果たしていると思う。
2度の映像化、内一つは主題歌を歌い自身も出演していました。
普段小説を読まない人へ、小説のおもしろさを充分に教えてくれた。
これは、アイドル加藤シゲアキさんにしか出来ない事じゃないかと。
彼は既に唯一無二の存在になっているのだから、もはや賞などは必要ないのではないかと。
波乱の展開で終えたチュベローズage22を読み終えた頃にそう考えていました。
この本は充分に優れているじゃないかと。
充分に作家加藤シゲアキさんは優れているじゃないかと。
そんなふうに考えながら後編である10年後のチュベローズ32ageを読み始めました。
これが!!!!!!ま~~~~~~~~~~おもしろくって!!!!!!!!!!!
すごくって!!!!!!!!!!最後の伏線回収や意外すぎる展開!!!
ことごとく外れていく自分の予想!!!!!!!!!またかよ!!!!!!!!
でもほんとに良い意味で裏切られる連続で!!!!!!!!!
読んでほしいのでネタバレは避けますが、最後はとても美しく
読みきる前は、age32でのチュベローズの出現率の低さに、「これ誰がチュベローズで待ってるんだよ~~~」などと言って
身近なシゲ担をおちょくっていたりなどしたんですが(すいません)
読み終わった今はもう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・チュベローズで・・・・・・・・・・・・・・・・待ってるんだよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って突っ伏してしまって全然起き上がれません。
描写表現も鮮明で、読みながら世界のヴィジュアルが頭に広がり
映像化してほしい!!!!!!!という気持ちになりながら一気に読んでしまいました。
特にラストのシーン!!!みんなもそうだよな!!??
チュベローズ読み終わったみんなたち~~!!!!!ラストのあれさ~~!!!映像化してほしいよな~~!!!!????
これをアイドルという仕事と並行して執筆したのだから恐ろしい。
歌って踊って曲作ってMCやってコメント言ってバラエティ出たりしながら合間を縫って????この話を???書いたの???
この話を作るには頭が良い事はもちろん、複雑に伏線を用意する計画性やそれを実現するための構成力、忍耐力が必要になってくると思う。
すごいっていうか怖い。加藤シゲアキさんが怖い!!!
運動神経を奪ったくらいでは割に合わないです神様。彼はなんでもこなしすぎです。
すっごい猫舌…とかそういうのも付け加えてバランスをとってください神様…
そして思い浮かんだ言葉は「加藤さん賞とってほしい…」でした。
さっきまであんなに「もう充分立派だぜ」みたいなことを言っていましたが、この作品は評価されてほしい。
いまだ「アイドルが遊びで書いてる」などと思っている人も少なからずいるでしょう。そういった人を黙らせるようなものが賞というものにはある。
肩書きは声の大きい人を黙らせるから。
彼に賞と言う矛と盾を手に入れてほしい・・・・・・・・
最初にも書きましたが、ファンは色んな理由があって加藤シゲアキさんに賞をとってほしいと思っています。
彼の努力が報われてほしいから。
受賞して自信を持ってほしいから。
本人がほしいって言ってたから。
私はNEWSのファンですが、チュベローズで待ってるを読んで強く思った感想は
「このとんでもねぇ小説を、たくさんの人に読んでもらい評価されてほしい」です。
そこには「NEWSの加藤さんが書いたから」ではなく「マジでおもしろかったから」という気持ちがマジLOVE100%です。
加藤シゲアキさんという作家には賞は必要のないものなのかもしれない。
彼はアイドルだから、賞がなくても本は出せるから。売れるから。いらないのかもしれない。
それでも作家としての彼のファンとして、賞をとってほしい。
アイドルという肩書きは時には作家としての彼を助けるし、時には猛烈に足をひっぱるかもしれない。
それでも私は、彼の力で書かれたこの物語達が、彼の力が評価されてほしい。
彼はもしかしたら当時ほど、賞を欲していないのかもしれない。
それでもいつか、いつか…と思うのをやめられません。
あとマジで映像化はしてほしい。フジテレビさんならきっとやってくれますよね。よろしくお願いします。